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うつわ

器は不在を許容してくれるものだと考えています。なぜなら、最初から空洞を前提に作らなければならないからです。
陶制作における絶対的なルールとして、塊は焼けないというものがあります。器ではない石のような塊を作ろうとしても、立体の中に空洞を作らなければなりません。
私がしてきた制作は、「不在」を前提とした「空洞」を作ること。「不在」を許容する物こそが器だと考えるようになりました。
また、器は何かを容れるものであることは間違いないでしょう。
それならば、私は逆に「不在」を容れるために、「器」を作ってみたいと思いました。

私が作った器を見た人が、この器の「不在」に何を容れるかに興味があるのです。
空虚に過ごした時間でも、別れた恋人でも、もう見ることができない人でも。誰しもが持っている「空洞」「不在」を容れる器を作りたいと思っています。
振り返ると、自分というものが不在な何年かを過ごしてきた気がします。大きな動きもなくただ生きていたという感覚です。
そんな「不在」の時間を避けようともせずに、ただ経過してしまった時間という経験の中で今の私ができあがってしまっていると感じました。
服をモチーフとしているのはそこにあります。
空虚な時間を過ごしていく日々の中で、それでも服を着て外に出ていかなければならない。服はそんな空っぽの私を許容してくれるように感じていたからです。

「不在」を許容してくれるもの。それを私は「器」と呼んでいます。

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